
演劇歴が長い話

私は小学校6年から大学卒業までずっと部活やサークルで演劇に携わっていたので、大学卒業後、「芝居の稽古が無い」という日常生活に非常に違和感を覚えました。
演劇界ってのは、芸術寄りの顔して意外と体育会系な面があり、何はともあれ体が資本。
基本的には毎日稽古があり、腹筋・背筋・柔軟運動・スクワットなどを欠かさず基礎体力を維持(他にも演劇界ならではの謎の厳しい訓練が多数)。
学生は、本番が迫ると真夏だろうが真冬だろうがエアコンも無い教室で丸一日稽古をしたりします。
≪お金をもらわずに働く≫
また、当然ですが、サークル活動では大道具も小道具も衣装も照明も音響もスケジュール管理も全て、自分たちでやらねばなりません。
みんな学生なので、本分は学業なのですが、時にはそれそっちのけでやります。
衣装が作り終わらないので徹夜したり、舞台美術を作るのに寒い屋外で何日もベニヤと電動ドリルとノコギリと戯れたり、大学側の都合で稽古場所が取れなくて必死で公民館の空き部屋を探したり、せっかくプランニングした照明も演出に却下されたり、本番まで紆余曲折。
そしてさらに、どこからもお金はもらえません。
まあ一応、大学から出る補助費もありましたが、当然足りず。
木戸銭を取る方針の学生劇団もありますが、それも主に学生対象ですから安いですし、私の居たサークルなどは観劇料を取らない方針だった為、部員から集めたなけなしのお金でなんとかやりくりしていました。
ですので、演劇をサークル活動でやっていた者は、どんなに労働しても無報酬、ということに慣れているきらいがあります(苦笑)
実際、初めて給料をもらった時には不思議な気持ちがしたものです。
「労働して、お金がもらえるなんて」と。ああ、なんていい社員なんだろう(笑)
≪何が楽しいのか≫
それでもみんな一生懸命やってしまうのは、やはりそれなりの見返りがあるからです。
先程、無報酬といいましたが、正確には金銭以外で色々得るものがあります。
何と言っても、本番の緊張感・高揚感。そして終演後の解放感。
これはお金では買えないですね。
また、みんな真剣に向き合っているので時には衝突もありますが、紆余曲折を経て大勢で何かを作り上げる一体感みたいなものも、演劇ならではの魅力だと思います。
役者に関して言えば、「自分ではない誰か」になれるというのも、非常に大きな魅力です。
ちなみに役者をやるタイプの人間は2種類に大別できます。(私個人の見解ですが。)
「目立ちたがり屋」と「引っ込み思案」。
二つは全く正反対のタイプですが、両方います。ちなみに私は後者のタイプ。
「目立ちたがり屋」は想像できると思いますが、「引っ込み思案」でなぜ演劇をやるのかと言えば、先程述べたように「自分以外の誰かになりたい」からだと思います。
(もちろん、引っ込み思案の人全てが演劇をやりたいわけではありません。一部の引っ込み思案の方の中に、そういったタイプがいるということです。)
ちなみに、私も色々な役をやってきましたが、演じていて楽しいのは不良(しかもチンピラ系)ですね(笑)
たぶん、私が社会人になってから知り合った方は、私がチンピラになってるのは想像もつかないでしょうが(笑)
※この辺の話は「間違えられる話」にて語ってますので是非。
≪演出の苦労と幸せ≫
ミュージカルサークルでは、演出も2度やらせていただきました。
「演出」というのは、その舞台全体を、どんな風にするか決める人です。
だから、役者の台詞の言い方から、照明・音響の具合、舞台美術のイメージなど全ての決定権を持ちます。
ある意味、一番“エライ”人。やることが多すぎて大変。
でも、演出ってのは、みんなに支えられて初めてできる仕事なんですよ。
逆に言うと、一人じゃ何にもできないんだから。
本当に、私が演出した時に協力してくださった全ての方に感謝します。
しかも、私ってば2回とも、演出やりながら役者でも出ちゃってるから、相当周りに苦労かけました。2回目は3人で演出を担当するという変化球的荒業だったのですが、その時もみんなに支えられました。
ちなみに1回目に演出をした「CRAZY FOR YOU」という作品では、どうしてもウッドベースを弾ける役者が欲しかった為、学内で捜していた所、部員のツテでなんとジャズ研の会長が出演・演奏してくれることになりました。
ちなみにその会長はとっても温厚な方で、私の抱いている“ミュージシャン・コンプレックス”(なんだそりゃ)を少し解消してくれました(笑)
もちろん演奏も素晴らしく、そもそも、まさかジャズ研の会長が私の演出作品に出てくれるなんて思いもしなかったので、これまた恵まれてることに感謝した出来事でした。
この作品に関しては、他にも奇跡的に恵まれたことがたくさんあったのですが、その一つに、タップダンサーに出演・協力していただけたということがあります。
そのミュージカルではタップダンスが欠かせないので、なんとか役者にタップダンスを踊らせたかったのですが、私自身習いたてで、人に教えるほどの腕前はもちろんなく、どうしようかと思案していた所、これまた部員のツテで、“在学中の社会人でタップダンスのプロ”の方に教えてもらえることになったのです。
そして特訓の末、なんとか役者陣はタップダンスを覚え、無事公演を終えることができました。
他にも感謝したいことがたくさんあったのですが、キリが無いので今回はこのくらいで。
どちらの作品も、長かったようであっという間に過ぎ、良い思い出だけが残っています。
(…いや、皆さんに苦労をかけたことは憶えてますよ。自分が大変だったことは忘れましたけど。)
あんな大人数の団体の中心に私がいたなんて、今でも信じられません。(写真参照)
何が引っ込み思案だよ、て話ですよね…。
皆様、本当にありがとうございました。



【上】 演出した作品の、本番前の記念写真。中央のジーンズにサスペンダーの奴が私。皆さんに感謝。
【中】 卒業公演の記念写真。この時は卒業生3人で協力して演出をしました。これも中央に写ってる。
【下】 巨大人食い花は私が作りました。後ろで二人がかりで力ずくで操作することにより、口をパクパク、葉をバタバタさせることができます。