
間違えられる話

男性によく間違われます。
ということは、私は男性ではないということですが、ここまでこのHPを見てくださった方で、なおかつ私本人と面識が無い方は、どうお思いになったでしょうか?
まあ名前が女性っぽいので、そのあたりでどう思うかもありますが(ただ“まほ”という名前の男性は稀にいるようですが)、私は文章も男っぽいといわれたことがあるので、どうなのかなあと思うわけです。
≪なぜそうなったのか≫
ところで、なぜ男性によく間違われるのかといえば、見た目がそう見えるからに決まってますが、じゃあなぜそういう見た目になったかといえば、ずっと演劇をやっていたことに関係があります。
実は演劇をやっている間、ずっと男役しかやらなかったんです。
初めは、女子しかいないから誰かが男役をやらなくてはならない、というだけのことでした。
で、背が高く髪もショートカットの私は無論男役に抜擢されるわけですが、それが2~3回続いてくると、俄然使命感が出てくるわけです。
「男役で舞台に立つからには、男性に見えるようになるべきである」
もう、演技が上手い下手以前に、最低限「男になりきる」という課題も科せられるわけで、台詞の言い方から動きまで、「男っぽい」って何だろう?と自問自答を重ねる日々。
通学電車内では、男性の座り方、立ち上がり方、吊革の掴まり方、毎日観察します。街中では、男性の歩き方、立ち方、喋り方、声の出し方、仕草などの特徴を探ります。
そして稽古中にそれをやってみるだけでは芯から身に付きませんから、日常から実践します。
ちなみに、声の出し方は、男女で違います。声の高さももちろんですが、息の出し方や言い回しの微妙なリズムなど。で、私はまあ素が男寄りなので(笑)、通常も男っぽい声の出し方に近いのですが、知らない電話番号からかかってきた時など、(もし相手がセールスや不審者だった場合)ナメられないように特に男っぽい声で対応したりします。
で、結果、実は知人からだったりして、「あれ?」と思われたりする(笑)
≪男役の魅力≫
男役って、面白いんですよ。
私の場合、性に合っていたので、もうこれ以上楽しいことはない(笑)
中学時代から数えると、役者として23作品に出演しましたが、全て男役でした。
少年から中年まで様々な役をやりましたが、やはりやっていて楽しいのはチンピラ系ですね(笑)
引っ込み思案の人間には絶対に言えないことが言え、やれないことがやれる。
胸倉を掴んだり掴まれたり、殴ったり蹴ったり、もあり。
「ふざけんじゃねえぞ」とか言っちゃう(笑)
ちなみに、大学のミュージカルサークルには男子部員もちゃんといたのですが、男子に混ざってやっていました。
実際の男性と、文字通り肩を並べなければならないので、高校時代よりさらに男らしさに磨きをかけるべく精進しましたね(笑)
まあ、喋り方とか動きとか細かい所なんですけど、やっぱり雰囲気自体を男らしくするには、そういう細かい点をいちいち気にして自分の素に落とし込んでいかないと、ふとした瞬間に不自然さが出てしまうことがあるので。
本番1~2ヶ月前からは、毎日胸にサラシを巻いて練習します。
これが、キツイ。
肺が圧迫されるので、歌もダンスも、していない時とは比べ物にならない。
人知れず他の役者さんよりハードな練習をしていたわけです。
まあ、巻かなくても大差ないよと言われてしまえばそれまでなんですが…(-_-;)
で、男らしさを通り越して、オカマっぽさを表現できればかなり来るとこまで来たということだな、と自分では思っていて(笑)、高校時代、小学生の男子役で、友達とふざけてる最中に突然ナースになりきるシーンがあり、そこで笑いを取れたら勝ちだと思っていました(笑)
結果、観客を笑わせることに成功(笑)
それに気を良くして、向上心に一層火が点いてしまったんでしょうね…。
また、ラブシーン的なものには縁が無かったのですが、一度だけ、ヒロインの不倫相手の役をやったことがありました。
抱き合った後に口論になりその挙句に射殺されるという、なんとも男冥利に尽きる(笑)役だったのですが、オープニング・ダンス・ナンバーをBGMに演ずるものだったので、ほとんど台詞は聴こえず、動きをオーバーにするしかない。
ちなみにこのミュージカルCHICAGO、女殺人者と辣腕弁護士を中心としたクールでセクシーな物語なんですが、いかんせん片田舎の大学生のこと、洗練されたセクシーさなど持ち合せているはずもなく…。
女性陣も男性陣も、演出に「セクシーさが足りない!」と檄を飛ばされながら、一生懸命セクシーさを追求していました(笑)
その通称:セクシー練(笑)では、リズムに合わせてモデルのように、かつセクシーな動きを意識して歩く訓練などさせられていました。
女子はまだ見られますが、男子のそれはまあ酷い(笑)
男のセクシーさってなんだ?と考えさせられました。(私はもちろん男性陣側…)
話は戻りますが、件のラブシーンでは相当イチャイチャしないと観客に伝わらない、ということで、セクシーを通り越して「エロさが足りない!」と怒られる始末。
しかも意外とその抱き合っているシーンの尺が長く、「これ以上はもう押し倒すしかなくなっちゃいますよぉ」という泣き言を言ってみたものの、「そこをなんとか、立ったままで!」(爆)
あれは恥ずかしかったですねぇ…。
しかも、練習を撮影したビデオを皆で見て反省会をしなければならない。
皆も気まずかったと思いますよ(-_-;) あと撮影係もね。
あの頃は毎日歯磨きガム噛んでたなあ…(苦笑)
まあ、具体的にどうイチャイチャしたかはご想像にお任せします(笑)
最終的に、どちらかというとあまりはしゃがないタイプの先輩(男性・照明担当)が、本番後に「まほちゃん、今日最高にエロかったよ!いやぁエロい!さすが!」と大絶賛してくださったのを覚えているので、多分そうだったんでしょう(笑)
しかし未だにそのシーンの映像を見る勇気はありません…(-_-;)
いつかもっと大人になったら、見られる日が来るのかな…(遠い目)
…いやしかし、いろんな意味でいい経験させていただきました。
≪男扱いされることについて≫
そんなこんなで少しずつ、しかし確実に男らしさを身に付けていったわけで(笑)
そういう環境で生きてきたので、私にとって「男らしい」「男にしか見えない」と言われるのは、ほめ言葉であって、逆に「男には見えない」というようなことを言われると激しく落ち込んだものです(笑)※
だって、男として舞台に立っている以上、「男に見えない」っていうのは、「演技が下手」「大根(役者)」ってことじゃないですか。で、日常でもそうするよう心がけていたので、舞台上じゃなくてもその影響は及びます。
まあ「男に見えないよ」と言われたのはまだ男役として駆け出しの頃で、同級生の女の子が、おそらく良かれと思って言ってくれた言葉なので仕方ないのですが。毎日セーラー服で会ってたしね…。ちなみにそれ以降、その言葉を誰かに言われたことはない気がします(^_^;)
※誤解のないよう述べますが、別に「女性扱いされるのが不愉快」ということではありません。
むしろどちらかというと、普段男らしくしなくてはと(勝手に)つっぱっている分、甘えてもいい立場に置かれると非常に嬉しい。
なにしろ快楽至上主義者ですので。辛いこと・苦しいことは嫌いです(笑)
安直なフェミニスト野郎には虫唾が走りますが(あ、いけない。つい言葉遣いが乱暴に…)、私のことを本当に思って優しくしてくださるのはWelcome♪ (女性でも男性でも)
要するに、「女の子に優しくする”俺” が好き」という人はどうも苦手で…(自覚していようがいまいが)。
でも、そういう人とそうじゃない人は、ちゃんと判りますよ。
ですから、私に親切にしたいと思った時は、迷わずどうぞ(笑)
ただ、私にとって残念なことに、喜びを表現するのが苦手なので、親切にされて心中ではすごく喜んでるのに顔にあまり出てないということはよくあります。
そういう時は、すみません。お手数ですが、是非「ああ、本当は喜んでくれてるんだな」と解釈してください(苦笑)
≪女子にモテる話≫
で、話を元に戻すと。
舞台に立つ機会のない今、そんな男らしさを貫く生き方をする必要は無いようにも思えますが、思春期をそういう風に過ごしてきたら今さら変えられませんよ。
そういう人格になっちゃってるんだから(笑)
何より、そのスキルが上がるにつれて、人生において嬉しいこと楽しいこと、面白いことが格段に増えました。役者をやっている時以外でも。だからやめる理由が無い。
まあまず筆頭に挙げられるのは、女の子に好かれることですね(笑)
女の子に「カッコイイ!」と言われるのは大層嬉しいことです。
カワイイ女の子って、本当に“存在するだけ”で価値があるなあと私はよく思います(笑)
こんなこと言うとフェミニスト(女権拡張論者)に怒られそうですが、でもやっぱり「美しいもの」という意味で、芸術に通ずる所があると思うんですよね…。
本能的に目を奪われてしまうというか、価値を勝手に見出してしまうというか。
ちなみに、よく男性諸氏が、女の子にちょっとでも笑いかけられたりすると「俺のこと好きなんじゃねーか」と思ってしまうと聞きますが、その気持ち非常にわかります(笑)
そして、「いやいやそんなわけない」と己で打ち消す空しさ(-_-;)
で、「私ってモテるなあ」と自覚はしていたんですが(←アホ)、ある時ミュージカルの練習中に、演出の先輩(女子)から「ちょっと練習終わったら残ってくれる?」と真面目なトーンで言われ、「ヤバい、オレなんかやらかしたか?」と小心者の私は内心冷や汗だらだらだったのですが、フタを開けて見たら、サークルの女子全員でバレンタインチョコを私の為に作ってくれて、サプライズで渡してくれた、という出来事がありました…。
しかも男子部員には内緒なので、男子を追い払ってから(笑)
まさかそんなことがあるとは思わなかったので、あの時は本当にビックリしました。
(中高生の頃、確かにバレンタインチョコはよくもらっていましたが、すっかり忘れてた。)
とても嬉しかったのと同時に、自分の小心さ加減にうんざりしたことを覚えています(苦笑)
でもまあ自惚れ度はそこまでひどくはなかったってことで、ある意味自分に安堵(笑)
≪男子に羨まれる話≫
でもそうなってくると、彼女たちの彼氏が黙ってないだろうと思いきや、「まほちゃん(←サークル内では基本的に名前で呼び合うルール)ならしょうがないよね…カッコイイもん」という変な空気。
私は彼女たちが彼氏の前で私にキャーキャー言っているのをどんな顔で見ればいいのか、いつも困ったものです(贅沢な悩み!)。
でも結局私とは結婚もできないワケだし、現在彼女たちは彼氏と結婚して幸せに暮らしています。
そういうのを見ると、やっぱり最終的には私の負けだよなあ、と切なくなるワケで(-_-;)
また、後輩の男子部員からは「どーやったらまほさんみたいにモテるんですか?」としばしば訊かれる始末。
「知らん。まあ、そもそも男じゃないからなぁ。存在が非現実的っぽいというか。私がこのままで、ほんとに男だったら、案外モテてないかもよ。無愛想だしネクラだし。」とか、そういう会話を呑みながらしたり。
「俺、理想の男像はまほちゃんなんだよね」というしょーもない後輩もいました(笑)
モテたいならもっと現実的なことを考えろ!(笑)
…いいヤツなので、幸せになってもらいたいですね(^_^;)
ちなみに、男役というと宝塚歌劇団をよく引き合いに出されるのですが、私はあのような麗人ではありません。あちらは何より“清く正しく美しく”をモットーとされてるわけで、私は、“その辺にいるフツーのお兄ちゃん”を目指してますので(笑)
余談ですが、落研では男物の着物着てました。
そもそも女性用じゃ丈が足りなくて端折れないし(最近はちゃんと長めのがありますけどね)。
それに男性用の方が、着るのが断然ラクなんですよ。なので、私は男性用着物は一人で着られますが、女性用は着られません(帯の結び方とか忘れた)。
≪間違えられエピソード≫
ところで、日常生活で知人以外の人と接触する上で、自分が男だと思われてるのか女だと思われてるのかわからないってことは、普通ないですよね。
私はいつもそういう状況です(笑)
相手が自分を男だと思ってるのか、そうじゃないのかわからない。難儀な人生です。
まあでも別にそんなに不便なこともないんですがね。
しかし相手にとっては、性別不詳年齢不詳の厄介な人間てことになります(笑)
大抵は男性だと思うようですが、私と同じように短髪で眼鏡をかけているような女性には、女性だと見抜かれる確率が高いです。やはり人は自分の中に男性女性のデータベースを持っていて、それに照らし合わせて相手の性別を判断しているんだなあと思います。
話は逸れますが、一昔前、テレビでニューハーフの方と女性を並べて、誰がニューハーフか当てる企画がよくありました。
私はあれ、大抵当てられます。アゴと首を見れば大方わかりますが、さらに肩幅や顔の大きさなど骨格、場合によっては声の出し方で判別可能。
でも皆さん、女性らしさを追求されてて素晴らしいと思います。
たまに、女性に対して「せっかく女の子に生まれたんだから、かわいくしなくちゃ!」とコメントする方がいますが、昔私はそれを聞くとそっくりそのまま本人に言い返してやりたい気分に駆られたものです。「せっかく男に生まれたんだから」、と。
まあでも、そういうことではないんですけどね。
なお、今後もお付き合いが続くであろう方に初めてお会いする時は、一応気を遣います。
男だと思われないよう、もしくは「どっちなのか?」と相手を戸惑わせないように、そういう時はなるべく女性っぽい服装にします。
といっても、基本的にはメンズの服・靴しか持っていないので、その中で多少女性っぽいデザインのを着るだけですが…(^_^;)
また、不本意なのですが、喋り方・動きもほんの少し女性に寄せます。
(でもそれも初回だけで、2回目以降は普段通りにしますが。)
なぜ男だと思われないよう気を付けるかといえば、もし長いお付き合いになった場合、結局はどこかでバレるからです。
例えばですが、学生時代の制服の話題になったりして、「ブレザーと詰襟どっちだった?」とか訊かれたら「いえ、セーラー服を着てました」と言うか、さもなくば嘘を吐かなければならない。
私は、嘘を吐くことに酷く罪悪感を感じる人間なので、それは無理です。
そもそも選択肢に「嘘を吐く」というのがない。
だからそこで、男じゃないことがバレる→気まずい、となる。
そういうわけで、“もう面倒だから男ってことでいけばいいじゃん”と思ったことも無くはないのですが、やっぱりできないなあと思う。
自由に生きているように見えて、浮世のしがらみにしっかり絡め取られている人間なのであります(苦笑)
閑話休題。
相手が私のことをどちらだと思っているのか、判別するにはいろいろなパターンがあります。
当人からはっきり「男だと思った」と言われたらもちろん間違いないですが、他にもぼんやりしたところでは、
・アクセサリーショップで「男性に人気なんですよ」と薦められる
・顔見知りのお店のお姉さんにバレンタインチョコをもらう
・釣銭受け渡しの際に「細い指してるわねー!」とおばちゃんに言われる
・女性と二人で温泉宿に行った時に布団をくっつけて敷かれる
などあります。
でもこれらは、もしかしたら女性に対しても取る可能性のある行動なので微妙です。
もう少しはっきりしたのでは、
・模試で男子用のプリント(男子校が載っている)を渡される
・初めての授業で、皆で板を運搬する際、先生が男子2枚、女子1枚の法則で板を手渡していた時、2枚渡される
など。
ちなみに、ホームセンターに買い物に行った時、なぜか警備員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられ、「タバコですか?」と聞かれたことがある。
タバコ吸いたそうなお兄ちゃんに見えたんでしょうねえ(笑) ちなみに私は吸わないのですが。
さらには、
・女子トイレに入るとビックリされる、または注意される
・「お兄さん」って呼ばれる
・高校演劇大会で「男子部員がいていいですね」ってアンケートに書かれる(いないのに)
・男子浴場を案内される
・きれいな顔してるわねって言われる
などなど。
女子トイレは日常茶飯事です。
あまりご婦人方を驚かしたくないので、もう近年はできるだけ男女共同トイレに入るようにしてます。
きれいな顔云々の件は、小学生の頃、母と一緒にいた時に近所の方にたまたま声を掛けられ言われたものです。
これ、実は先方が私のことを男の子だと思って言った言葉で、“男の子にしては”っていう意味。(会話をするうちに勘違い発覚。申し訳ない(苦笑))
言われた時点で薄々わかってましたけどね。だって別に“きれいな顔”じゃないもの(笑)
他にも、エレベーターで男子学生と乗り合わせた際、その二人が「どっかにいい女いねえかなー」という会話をしたり(笑)
まあ、私が女だと思ってたら言わないでしょうねえ。それとも迂遠なアプローチなのか(笑)
あとは、丸一日一緒に行動してた他大学の落研部員たちにずっと男だと思われてたとか、バイト先で週3~4回顔を合わせる運送屋のお兄さんに半年間ずっと男子学生だと思われてたとか(この時は歳を訊かれたのでバレた(笑))。女友達と二人で出かけると彼氏と間違われるとか。そういう感じです。
服装はともかく、声も低いので喋ってもわかんないんですよね。動きも男っぽいし。
いやー面白いですね(笑)
間違えた方は恐縮なさるので、いつも申し訳ないと思うのですが、私は間違えられたら喜ぶ変人なので気にしないでいただきたいと思っています。
人は見られたい見た目になっているものですから。どっから見ても男だったら、たとえその人物が戸籍上女だったとしても、男のように扱っていいんです。私はそう思います。
そんな私も、レディースデーはちゃっかり活用したりする(笑)
背に腹は代えられない(>_<) 収入があまり豊かではございませんので!
その代わり、重い荷物持つし、席は女の子に譲るよっ(笑)



【上】 「オズの魔法使い」のワンシーン。私はかかし役。当時は英語劇サークルだった為、歌も台詞も英語でした。
その後、英語劇の枠からはみ出てミュージカル中心に。
【中】 件の「CHICAGO」。ラストの全員決めポーズの瞬間。見えないと思いますが、私は右から4人目で、なぜか「今でしょ」ポーズをとっています(笑)
【下】 演出した作品。左端のバーカウンター内にいる兄ちゃんが私。二日間(2回)の公演で観客動員数140人。当時最多記録でした。本当に皆さんに感謝。