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宅配という仕事の話

宅配のバイトをしています。
もうかれこれ4年くらい経つでしょうか。
守秘義務があるので具体的なことは言いませんが、私が思う「この仕事の素敵な所/大変な所」をつらつら書いてみたいと思います。

 


≪素敵な所①≫
世の中に仕事はいろいろありますが、この仕事の特権は、たくさんの人に直接「ありがとう」と言ってもらえることだと思います。
知らない人の家に行って、物を渡す。端的に言えばそういう作業。
それが仕事だからやってるわけですが、「ご苦労様」とか「ありがとう」とか言ってもらえる。
これが販売業だったり、飲食業だったり、特にオフィス勤務なんかでは、なかなかそういうことはありません。
関西では頻繁に「ありがとう」と声をかける習慣があるようですが(素敵ですね)、関東ではあまりないので、言われるとちょっと特別に感
じます。

このように、自分の働きに対してすぐにわかりやすい形で「報酬」が返ってくるので、些細なことですが「やっててよかったなあ」と頻繁に感じることができます。


≪素敵な所②≫
さらに私にとってありがたいのは、午前中に起きるきっかけになることです。

フリーデザイナーなんてやくざな商売をしていると、絶対に不摂生になります。
私は根本的に夜型なので、何かやろうとすると夜中に集中してしまい、よって朝寝坊し、遅い朝食兼昼食を食べ、仕事や雑用をし、また夜中
に仕事をする。
というサイクルから抜け出せなくなります。

そこへこの仕事があると、全然違う。


”特に用事は無いけど己の精神力のみで早起きする” のと
”出勤しなくてはいけないから早起きする” のでは、モチベーションが全然違います。
まあ用事があろうがなかろうが、起きるのはどうあってもツライのですが(涙)、仕事があればなんとか起きられる。
裏を返せば、用事もないのに自力では起きられない。なぜなら寝るのが好きだから(苦笑)

 

昔は休日は平気で12時間以上寝てました。
近年はあまりそういうことは無くなりましたが、それでも1年に2~3回くらい、そういう日があります(^_^;)


≪素敵な所③≫
それから、フリーデザイナーは陥りがち(?)な運動不足が解消できます。
配達中はほぼずっと体を動かしていますから、とても健康的です。
現在はマンション内と駅前商業施設の中の配達を担当しているので、荷物を載せる台車とはもうすっかりともだち。身体の延長の様に扱えます(笑)
でも「ともだち」使いの荒い私は、よくくるぶし辺りに青痣を作っている…。


また、商業施設は重い物を運ぶ機会が多いです。
飲食店の米とか。コピー用紙とか。チラシ何千部とか。什器とか。その他諸々。
個人宅でも、飲料水やゴルフバッグなど。
ですから、今ではすっかり鍛えられて、30kg程度なら持ち上げられます。
15kg以下なら全然躊躇せず持てます。
やっぱり女のコにモテるには、筋肉つけないとねッ(笑)

 

そして何より、運動した後のご飯が美味い。
これかなり重要。
たとえ、この労働で稼いだ大部分を昼食代に充ててしまうとしても。
美味しいご飯が食べられるというのは、私にとってそれだけの価値がある。

 

そんなわけで、様々な人とのふれあいがあって、規則正しい生活と適度な運動ができ、ご飯も美味しく食べられて、とても素敵な仕事です。

 

 

≪そして大変な所≫

大変な所は…色々あります。
基本的に力仕事だから体力的にキツイことはもちろんですが、これはまあこの仕事を選んだ時点で覚悟してることですから、仕方ありません。
とはいえ腰やら背中やらにギックリきてしまうと大変ツライですが…。

(私も既に何度かなった…。)

 

 

しかし、そういうことより、精神的な負担の方が大きい気がします。
お客様に直接係わる商売だとどうしても避けられないことですが、毎日何が起こるかわからないので、事前にあまり予定は立てられない。


荷物の量はその日になってみないとわからない。
どのお客様がご在宅でどのお客様がお留守かわからない。
いつ集荷や再配達の依頼があるかわからない。
そういったことに臨機応変に対応して、勤務時間内に仕事を終わらせなければならない。
…なかなかの技能を求められることですよ、これは。

 

しかし、たとえどんな状況であっても、お客様とのお約束通りにお届けしなければならないのです。それが、この仕事に就いた者の使命なのです。
暑い日も寒い日も、台風でも大雪でも。巨大な物も薄っぺらい物も、冷凍冷蔵品も貴重品も。

とにかく無事にお客様の元へ。

 

ですが使命といえど、やはり悪天候や荷物の多い日は、指定時間などのお約束を守るのが困難なことがあります。
そういう時は本当に申し訳なく思います。
例えば、お店で売る商品を届けるのが遅れてしまった時
など。

私も販売業の営業部にいた頃に「在庫切れによる販売ロスのことを考えろ」と(生意気にも)新入社員に指導していた時期がありまして…。

ああー、これじゃロス発生ですよねー(*_*;  と、心痛を感じております…。

 

 


なお近年、熱中症が原因で亡くなった人数を職種別にみると、運送業は5~6番目に多かったらしい。
過酷だなあ…。
私はドライバーではないので、幸いそんなにツライ思いはしていないのですが、同じ営業所のドライバーさんたちを見ていると、大変さがヒシ
ヒシ伝わってきます。

 

で…そんなに大変なのに一生懸命この仕事をやっている方々を見ていると、一種のマゾヒズムかもしれんなあと、思わずにいられない(-_-;)

すごく重い物を運ばされて、汗だくになりながら「ありがとうございます!」と笑顔で言う状況とか。
少なくとも私に関しては、ありますね。実はMです(笑)

 

 

…まあ、マゾヒズムかどうかは置いておいて、役付の方などはさらに、家庭で過ごす時間を削って滅私奉公なさっていたり。

働き過ぎることについての善し悪しはともかく、私みたいな生活をしている者から見ると、頭が下がりますね、本当に。お身体壊さないか心配になります。

 

 

 

≪知らない人が私を知っているということ≫
ところで、”私は相手を知らないのに、相手が私を知っている” ということがあります。
演劇などをやっているとよくあることなのですが、舞台に立っている側はお客さんの顔が見えないので、そういうことになります。
それって結構特殊な状態だな、と思いつつ、長く演劇をやっていてそんなことにも慣れ、そして最近は演劇から離れてそういうこともなくなっ
ていたのですが。

 

このバイトをするようになり、そういうことがまた身の周りに起こり始めました。

どんな感じかというと…。


いつも申し訳なく思うのですが、私は人の顔を覚えるのが苦手で(人の顔を見て喋れないんだから当然といえば当然)、よって認識できる人がかなり限られます。
なので、配達先の方々のお顔も(努力はしているのですが)未だ全員は覚えられず(配達先が多いこともあり…大目にみてください)。


でも配達される側からすれば「よく配達に来る人」ということで、私を覚えている様子。
特に、ショッピングモールでは台車を大きな音を立てて転がしながら移動しているので、嫌でも目につく。

なので、私が私服で訪れても、「お疲れ様です」と声を掛けられたりする。

(ほとんど配達したことのない店でも…!)
それで、「あ、私がいつも配達してる奴だということがバレているな」と認識する。

 

これは下手に街中で悪いことはできないぞ。と思う。(しませんけど)

 

と同時に、やっぱり私のことを知っている人がたくさんいるのはなんとなく嬉しくて、特によく配達するお店の方々なんかは顔馴染みということで親切に接してくださるので、有難いことだなあ、この仕事やっててよかったなあ、といつも思います。

こんな風に色々な人と知り合いになれるのも、この仕事のいい所ですね。

 

 

≪育ってきた環境が違っても≫
また、この仕事をやってよかったと思うのは、ドライバーさんたちと交流が持てたことです。

 

ドライバーの皆さんは、私の既存の友人たちとはだいぶ違うタイプの人種です。
例えば既婚者だということとか。早婚も多い。20代でお子さんが二人以上なんて普通。みたいな。

 

また、いわゆる「高学歴」といわれるような方は少ない。で、ご自分を卑下して「自分は勉強できないから」というようなことをおっしゃったりする方もいるのですが。


でも、普通に接していて勉強できるとかできないとか、ましてや学歴なんてわかりません。
高卒だから大卒より仕事できないとか、ましてや頭が悪いとか、全然そんなことはないし。
むしろ高学歴の持ち主よりも、よっぽど仕事できたり、人間的に尊敬できる人もいます。
確かに、世間的に「いい大学」と呼ばれる所を出た人間は勉強ができるタイプなのは間違いないと思いますが、それと賢さはまた別だなあと、しみじみ思ったりする。

 

 

あーでもこんなこと、まあまあ高学歴の人間が書くと、逆にイヤらしいかなあ…(-_-;)
そういう論評すること自体、上から目線みたいな…。


そもそも、そう思ったのは、「大卒の人間関係はほとんどが大卒」だという調査結果を聞いたのもあって。
確かにそうかもなあと思ったわけです。
大学を卒業して大卒募集の枠で会社に入社すると、周りも大抵大卒。
高校の学力レベルが大学進学を目指す所なら、高校の友人も大卒になる可能性が高いし。
すると周りは大卒ばっかりになる。(しかも大体同じレベルの。)

 

それってつまらないんじゃないかなあと思う。

もちろん、考え方の近い友人がたくさん居るというのは精神的にも大切なことです。
でも、似たような環境で育った、似たような価値観の人間だけで集まっていると、自分の間違いや思い込みに気付きにくいし、新しい発見をするチャ
ンスも少ない、というマイナス面もあると思う。(これはもちろん高学歴者でなくてもあてはまることですが。)

 


話を戻しますが、要するに、必ずしも「勉強ができる」=「頭がいい」ではないし、さらに言えば「勉強ができる」=「幸せになれる」ではないよなあ、とは思っていました。
そりゃ、幸せになる為の一つのツールではありますが。
でも勉強できても不幸になるし、勉強できなくてもすごく幸せになる人もいるわけで。

 

 

私は、「賢い」といわれる人の一つの大きな条件として、「自分がどうしたら  ”できるだけ楽しく(嫌な気持ちにならずに)生きていけるか”  を知っている」、つまり

「自分の性質をよく理解している」ことが挙げられると思います。


生きている限り誰でも、理不尽な事やストレスの溜まる事に出遭いますが、そんな時に

「どう対処すれば自分にとって最も良い結果が得られるか」の答えを導き出せるということ。

(ベストでなくベターでも良い。)


ただ、ここで間違ってはいけないのは、”長期的に見て” 良い結果であること。
一時的にメリットはあっても、例えばそれが誰かに損害をもたらす手法であり、その相手の信頼を失うことで結果的に自分が損をするのであれば、賢い選択とは言えないわけで。
そうならない為には、

「他人の気持ちもわかる(わかろうとする)」ということが同じくらい大切ですね。

 

しかし、他人に気を遣い過ぎて自分にストレスがかかってはこれまた主客転倒。
…うーむ、難しい。でもそういうバランスが上手くとれる人間になりたいものです。

 


と、色々述べましたが、最終的には、他人からどう評価されようが「自分は幸せだ」と思える人がいわゆる人生の勝ち組だ、と私は思っています。

 

 

まあとにかく、ドライバーさんたちを見ていて、やっぱり幸せになるのに学歴は関係ないよなとしみじみ思うわけです。
仕事は大変だけど、奥さんがいて、かわいいお子さんがいて。家も買えるし、新車も買える。

 

 

そんな、私と全然違うタイプの人生を歩んできた方々と交流できて楽しいです。

私みたいなバイトにも、皆さんとても親切にしてくださいますし。

そういう時には、「ああ私がもっと可愛い女子だったらよかったのになぁ…」と、

私が「可愛い女子」でないことを秘かに申し訳なく思ったりしてます。いや、ホントに。

若くて可愛いコの方が、やっぱり親切にし甲斐があるじゃないですか。…って、あれ。

こんなこと考えてる私は、人を見かけで差別するイヤラシイ人間ですか…?(-_-;)

 

 

 

ちなみに、年に2~3回、ドライバー仲間の飲み会に誘っていただくのですが、それがそもそも夜23時集合とかで。
配達を終えるのが21時過ぎですから仕方ないのですが、仕事終わりで来る方も、明日仕事(遅番)の方も、そんな時間から呑んでよく体力もつなあといつも感心
します(笑)
翌日休みの人なんて、2次会のカラオケに朝5時までいます。

半数は寝てますけど(笑)


そんな会に朝まで付き合う私もモノ好きだと思いますが…。

 


≪素敵な仕事です≫
以上のような理由から、私はこの仕事が好きです。
もちろん、この「アルバイト」が、ですけど。
なにせドライバーという職種の苛酷さを目の当たりにしているので、いくら皆さんに「ドライバーになっちゃえばいいのに」と言われても、なれません。なる気もありません… 私には無理だ!(-_-;)

 

でもそう言っていただけるのはとても嬉しいです。
頑張って、少しでも社員の皆さんのお役に立てたらいいなと思いながら、日々働いています。

 

 

ああ、でもデザインの仕事の方も、頑張らないとなあ…。

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